凛とした花嫁
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
ある結婚式で、素敵なご新婦に出会うことがありました。初めてお会いした時の第一印象は、「凛としていて、とても丁寧な方」というものでした。会場にいらした瞬間から、背筋がしっかりと伸びており、落ち着いた雰囲気をまとっていることが一目で分かりました。私たちスタッフに向けた最初のご挨拶も、すぐに立ち上がり深々とお辞儀をされて、「よろしくお願いします」と、心のこもったお言葉をくださいました。その所作の美しさに、思わず「しっかりした方だな」と感じたことを、今でもよく覚えています。
それから数回、打ち合わせを重ねる中で、ご新婦の人柄がますます明らかになっていきました。ご新婦はいつも私たちスタッフの話に真摯に耳を傾け、質問をされる時も、答える時も、しっかりと目を見てお話しされました。表情にも落ち着きがあり、考えながら丁寧に対応される姿に感心させられるばかりでした。
お話を伺う中で、彼女の成長の背景にはご両親の存在が大きいことが分かりました。幼い頃から礼儀作法には特に厳しく、しっかりとしたしつけを受けて育てられたそうです。しかし、その厳しさは単なる厳格さではなく、ご新婦の心に強い愛情として根付いており、ご新婦の姿勢や態度に表れているのだと感じました。
結婚式当日、ご新婦はその凛とした美しさをさらに際立たせていました。これまでの人生で、ご両親から受けてきた多くの教えを胸に刻みながら、これからはご新郎と共に新しい人生を歩んでいく決意が固まっているようでした。そして、お母様からのベールダウンの時間がやってきました。
チャペル内で、厳かな音楽が流れる中、ご新婦とお母様は向かい合いました。その瞬間、ご新婦は一礼をして、感謝の言葉を口にしました。
「お願いします」
短い言葉でしたが、そこには深い思いが込められていました。これまで育ててくれたお母様への感謝、そしてこれからの新しい人生への覚悟と誓いが、その一言に凝縮されているようでした。
お母様はその言葉を受け止め、ゆっくりとベールを下ろしました。まるで時間が止まったかのように、その手の動きは慎重で丁寧でした。お母様がそっとベールを整える姿を、ご新婦はじっと見つめ続け、微動だにしませんでした。そして、ベールが完全に下ろされた瞬間、ご新婦はゆっくりと重心を上げ、静かに微笑みを浮かべました。その表情は、ご両親に対する感謝の気持ちを、言葉ではなくその姿で伝えているかのようでした。
その光景は、式の進行を見守る私たちスタッフの胸にも深く刻まれるものでした。
チャペルディレクター 末木より