Q4 子どもがいる場合の結婚式
私には5歳の女の子がいます。娘は彼になついてくれていますが、彼をお父さんとして受け入れてくれるかどうか、私が再婚するということをどこまで理解しているのか、判断できかねるところもあります。結婚式は挙げるべきでしょうか。挙げるとしたら、どんなやり方がよいですか?
私が視察でアメリカに行ったときのこと。ダラスの小さな教会で、熟年カップルのセカンド・ウエディングに参列しました。男性には男の子がふたり、女性には女の子が3人、お子さんを連れての結婚式です。男性側の長男は多分反抗期で、ふてくされた表情でした。式が終わる頃、牧師先生が聖壇に子どもたちを招き、みんなを抱きかかえて何かを囁いていました。子どもたちはうなずきながら返事をしています。新しいお父さんから娘たちにプレゼントが渡され、小さな子は待ちきれず、すぐにその場で箱を開けてしまいました。教会が和やかな雰囲気に包まれたそのとき、意外なことがおこりました。
男性側の長男が、新しいお母さんに近づいて握手を求めたのです。 彼の顔を見た瞬間、私は涙が止まらなくなりました。式の前とは別人のように素直な表情だったからです。教会の階段を上がるときには他人だったふた組の家族が、式が終わって階段を下りるときには、ひとつの家族になっていました。
結婚式の不思議な力
結婚式には不思議な力があります。わずか30分でひとつの新しい家族が誕生する。そんなパワーをもつものは、結婚式以外にはあり得ません。お子さんがいるなら、ぜひその子も一緒に、みんなで家族式をしてほしいのです。 お母さんが自分を差し置いて新しくお父さんになる人と神さまに結婚を誓ったら、子どもは疎外されているように感じるでしょう。昨日まではよそのおじさんだった人が、急に生活の中に入ってくるのです。これから家族としての絆がどう深まるかは結婚式というスタートラインで決まるといっても過言ではありません。
結婚式は形式ではありません
結婚式は形式ではありません。その価値というのは一人ひとり、みんな違うもの。ここで良い思い出を作ることができたら、お子さんの心の中で、前のお父さんとの決別も、少し受け入れやすくなるのかなと思います。ただ、家族ごとに状況はそれぞれ違いますし、心のこもらない式をつくっても歯車が噛み合わなくなることがあり得ます。式のプログラムを作るにしても、「自分たち家族の新しいスタート」にふさわしい結婚式を考えなければなりません。安易に判断せず、そんなときこそ結婚式のプロを頼ってください。きっと温かいファミリーのスタートになりそうです。
イラスト tocco
この方にお聞きしました。安部トシ子さん
【プロフィール】1983年、南青山にウエディング・プロデュース会社㈱オフィース・マリアージュを設立。花嫁さんにとって結婚式が人生の宝物となるよう39年間サポートし続けているウエディング・プロデューサーの草分け的存在。各種講演やブライダル誌での監修や執筆など幅広く活躍。『25ansウエディング』では35年間花嫁の多様な質問、悩みに答えている。
《書籍紹介》
著書 「安部トシ子の結婚のバイブル」(発行 アシェット婦人画報社、「いい結婚式ってなんだろう」(発行 エイジェイ出版)
監修「育ちが良いと思われる50の習慣」(発行 宝島社)、「大事なところをきちんと押さえる結婚の段取りとしきたり」(発行 マイナビ) 他