祖母からのベールダウン
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
幼い頃にお母様を亡くされたご新婦は、お祖母様の元で愛情深く育てられました。お祖母様は、ご新婦にとってお母様代わりであり、いつも温かな存在でした。時にはケンカをして口をきかない事などもありましたが、お祖母様への感謝の気持ちは、ご新婦の中でずっと育まれていました。結婚式の準備が進む中、ご新婦はベールダウンを誰にお願いするか悩まれていました。
当初はスタッフに任せようと思っていたものの、「せっかくの機会だから、母のように育ててくれた祖母にお願いしたい」と心が決まりました。
結婚式のリハーサルがはじまり、ベールダウンの方法をご案内した時のこと。お祖母様は小柄、さらにご新婦はヒールを履いておられたため、お祖母様との身長差が開いてしまい、普通にしゃがむだけではベールに手が届かない状況でした。
その様子をみた私は、「もしよければ、少し膝をつくようにかがんでいただいても大丈夫ですよ」とご新婦に声をかけました。そうしてお祖母様の手も無事に届き、本番ではご新婦は膝をついてベールダウンを行っていただく事となりました。
いよいよ本番、ご新婦は真っ白なドレスに身を包み、笑顔で入場を迎えました。お祖母様の前に立ち、ご新婦はリハーサル通りに膝を少し折り、体を小さくかがめました。その姿は、まるでお祖母様に心から寄り添い、感謝の思いを伝えようとするかのように見えました。
そしてお祖母様はご新婦のベールを震える手でそっと下ろし、「幸せになってね」とおっしゃると、そのままご新婦をしっかりと抱きしめられました。
涙を浮かべながらのその言葉には、お祖母様の深い愛情が込められていました。そして、その言葉を受け取ったご新婦も、感極まって涙をながしながら「ありがとう。大好きだよ」とお祖母様に応えられました。
お二人の姿は、会場全体に温かな感動を広げました。ご新婦を亡きお母様に代わり、愛情深くお育てになられたお祖母様、そしてその愛に応え感謝をつたえるご新婦の姿は、誰の心にも深く刻まれる瞬間でした。まわりのゲストの目も自然と潤み、笑顔と涙が混じり合う温かな空間が広がっていました。
結婚式という人生の節目に、愛する家族との絆がこれほど強く感じられる瞬間があること、そしてそれがどれほど大切なものであるかを、改めて思い知らされた場面でした。
チャペルディレクター 髙橋より