感謝のハグに込められた思い
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
インターナショナルスクールで先生を務めているご新婦。日々多国籍の生徒たちに囲まれ、さまざまな文化や価値観に触れながら教壇に立っています。彼女が教えるスクールでは、日常的にハグが交わされる文化が根付いていました。嬉しいとき、悲しいとき、何かを成し遂げたとき、そして「ありがとう」を伝えたいときも、ハグは大切な表現手段として自然に行われています。ご新婦にとって、その温かい行為は人とのつながりや感謝の気持ちを体現するものでした。
そんなご新婦は、挙式前に私たちに一つの希望を伝えてくれました。
「エスコートの最後に、お父さんに感謝のハグをしたいんです。でも、お父さんは恥ずかしがり屋だから、きっと嫌がると思うんです。」彼女の目には、照れ屋なお父様の姿が浮かんでいたのでしょう。大切な場面で、恥ずかしさを感じることなく感謝を伝えたいという思いは強く、その悩みに共感した私たちは一緒に考えました。
そこで、私たちはエスコートチェンジの際に「ファザーズブートニア」を贈り、その瞬間にハグをするのはどうかと提案しました。「お父様にブートニアをお渡しするとき、それが感謝のしるしとしてハグを自然に交わせるタイミングになるかもしれません」とアドバイスをしました。ご新婦は少し安心した様子で、このアイデアを気に入ってくださいました。
そして迎えた挙式当日。緊張感が漂うチャペルの中、ご新婦はお父様と腕を組んでバージンロードを歩きます。父娘が歩む最後の数歩。祭壇の近くで足を止めると、ご新婦はお父様と静かに向き合いました。彼女の手にはファザーズブートニアが握られており、感謝の言葉とともに、お父様の胸元にそのブートニアをそっと差しました。
そして次の瞬間、ご新婦はやわらかく、そして心からの想いを込めて、お父様にハグをしました。まるでその瞬間に、これまでのすべての感謝の気持ちが形となり、二人を包み込むかのようでした。
お父様は一瞬驚いた表情を見せましたが、すぐに目を閉じて、娘のハグを優しく受け止めました。いつもは照れ屋で少し恥ずかしがりやなお父様が、その瞬間だけは恥ずかしさを忘れたかのように、ご新婦の温かい気持ちを素直に受け入れたのです。
その光景を見たゲストたちは、感動を抑えきれず涙を浮かべる方も多くいました。父娘の間に流れる穏やかで優しい時間は、まるで二人だけの世界のように美しく、忘れがたい瞬間となりました。ご新婦の「ありがとう」の気持ちは、お父様だけでなく、そこにいたすべての人々の心に静かに響き渡りました。
チャペルディレクター 宮本より