「せーのっ！」

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

お父様のことが大好きなご新婦の挙式で、特別なエピソードがありました。ご新婦は、お父様ととても仲良しで、小さな頃からお父様のことが大好きだったようです。

挙式の打合せの際、「入場はどなたと歩かれますか？」と伺うと、ご新婦は迷いなく「パパと歩きたいです！でも、パパはきっと号泣すると思いますけどね…」と微笑みながら答えられました。小さな頃から、お父様と一緒にバージンロードを歩くことがご新婦の夢だったのです。

結婚が決まってから、お二人にとってこの日がどれだけ特別なものであったかが伝わってきました。お父様もまた、大切な娘が結婚するということを心の中でずっと思い描いていたに違いありません。娘の成長を見守りながら、お父様はこの瞬間が来ることを待ちわびていたことでしょう。おそらく、娘が幼かった頃の思い出や家族との時間を何度も思い返していたのではないでしょうか。

そして迎えた結婚式当日。チャペルの扉が開かれ、花嫁とお父様が腕を組んでゆっくりとバージンロードを進んでいく姿がありました。その光景は、感動に満ちていて、列席者全員が静かに見守っていました。お父様とご新婦の歩幅は小さく、丁寧に一歩一歩を踏みしめながら、長い道のりを歩んでいくように感じられました。この瞬間は、まさにお二人にとって人生の特別な一ページであり、言葉では表しきれない感情が溢れていたことでしょう。

その途中、バージンロードの真ん中あたりまで進んだところで、ご新婦がドレスの裾を踏んでしまい、足を止めました。その瞬間、少しの間が空きましたが、お父様は全く焦ることなく、優しく娘の隣で立ち止まりました。ご新婦が顔を上げると、お父様と目が合い、二人は思わず微笑み合いました。その微笑みには、二人だけがわかる特別な想いが込められていました。

その後、ご新婦が「せーのっ！」と小さな声でお父様に合図を送ると、お二人は息を合わせて、再び一緒に新たな一歩を踏み出しました。この一瞬の出来事は、ご新婦とお父様の心の結びつきを象徴するようなシーンでした。誰よりも大切に思う娘のために、一歩一歩をゆっくりと、心を込めて歩んでいたお父様。そして、そんなお父様と共に歩むことが、ご新婦にとって何よりも特別で、心に残る瞬間だったのです。

お二人がゆっくりと進むバージンロードのその先には、ご新郎が待っており、新たな未来へとつながる瞬間が訪れました。この結婚式の中で、お父様とご新婦が見せたその小さな出来事は、これからの人生においてもきっと忘れられない大切な思い出として残ることでしょう。会場全体が優しさと愛情に包まれた、感動的な一幕でした。

チャペルディレクター　末木より