力強いエール
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
ご結婚式の日、特別な想いを抱いているのは花嫁だけではありません。ご新郎もまた、これから始まる新たな生活への期待と決意、そして少しの緊張感を感じながら、その日を迎えます。そしてそのご家族もまた、様々な感情を胸に抱きながら、ご新郎ご新婦を送り出します。
チャペルの扉が開かれる直前、ご新郎は家族と最後の瞬間を過ごしていました。そのとき、静かなオルガンの演奏が響くなか、突然、チャペルの高い天井に跳ね返るほどの大きな音が「バンッ!バンッ!」と2回鳴り響きました。その音の主はご新郎のお父様でした。お父様がそれはそれは力強く、ご新郎の背中を叩いて送り出されたのです。
お父様の表情には、息子を送り出す覚悟と誇らしさがにじみ出ていました。その背中を叩いた一瞬に込められた想いは、「がんばれよ」「しっかりしろよ」「おめでとう」というたくさんの気持ちが詰まっているようでした。それまでずっと父として支えてきた息子が、ついに大切な人と共に歩む決意を固め、その第一歩を踏み出そうとしている――そんな誇りが、その手のひらから伝わっていたのでしょう。
今ではお父様よりも広く、たくましくなったその背中に、ご新郎はお父様の想いをしっかりと受け止めました。そして、一瞬の間に感じた深い愛情を胸に、ご新郎は堂々とバージンロードへと一歩踏み出していかれました。ご新婦の待つ場所へ向かい、共に新たな人生を歩む覚悟を示すその姿に、私たちスタッフも胸が熱くなりました。
お父様の背中を叩く行動は、言葉にこそならなかったものの、その音には強いエールと深い愛情が込められていました。何年もの間、息子の成長を見守り、支え続けたお父様が最後に示したその「がんばれ」は、ご新郎の心に刻まれ、新たな家庭を築く力強い原動力になったことでしょう。
そしてご新郎は、ご新婦と共に並び、手を取り合い、誓いの場へと歩んでいきました。その表情はどこか安堵と決意に満ちていて、目の前に広がる新しい未来に対して、希望と力を持って進んでいく強さを感じました。お父様から受け取った愛情とエールが、まさにその背中を後押ししているようでした。
挙式が進むなか、チャペルにはご新郎ご新婦を祝福する温かな空気が満ち溢れていました。ゲストの皆さまも、お父様とご新郎の心温まる瞬間を目の当たりにし、それぞれが自分の家族への想いを馳せているように感じられました。
結婚式は、新たな家族が誕生する瞬間であると同時に、今まで築き上げてきた家族の絆を改めて感じる日でもあります。ご新郎にとっては、家族から送り出され、新しい家庭を築くスタートの瞬間。そして親御様にとっては、これまで育ててきた息子が一人の男性として立派に成長し、大切な人を守り共に歩む姿を見届ける、大きな節目の瞬間です。
お父様がご新郎の背中を叩いて送り出したあの瞬間には、ご家族全員の想いが込められていました。その強く優しい一撃は、ご新郎が新たな人生を歩む勇気を奮い起こし、ご新婦と共に幸せな未来へと進んでいく大切な後押しになったのです。
チャペルディレクター 末木より