Q12 信者ではないのでキリスト教式に抵抗がある

十字架の前に立つ新郎新婦
しきたり・マナー

幼い頃から、チャペルでの結婚式に憧れがありました。けれど私も彼も、クリスチャンではありません。単にドレスが着たいから、美しいチャペルが素敵だから、という理由だけでキリスト教式を選んでも良いのでしょうか。また、ちゃんと挙式ができるか心配です。

キリスト教というのは、必ずしもクリスチャンだけを祝福しているものではありません。本来は広く万人を祝福し、そこに集うすべての人が幸せな人生を歩めるようにと願う教えです。
それにもかかわらず、日本では「信者ではないのに、キリスト教式を挙げてもいいのだろうか」という受け手側の遠慮と、「祝福しますよ」という送り手側の大きな気持ちとのあいだに、まだまだギャップがあるように感じます。結婚式のご相談を受けていると、その戸惑いや迷いを抱えたまま、選択肢を狭めてしまっている方も少なくありません。

「ウエディングドレスを着たい」「素敵なチャペルに憧れている」そんな理由が、キリスト教式を選ぶきっかけでも、まったく問題はありません。司式をしてくださる牧師先生も、「これを機に信者になってほしい」と強制することはありません。
むしろ、「知らないままの人生より、少しでも知った方が人生は豊かになるでしょう?」という考え方で、結婚式という節目を通して、キリスト教にほんの少し親しみを感じてもらえたら嬉しい、という思いを持っていらっしゃいます。信者ではないからと遠慮せず、憧れがあるなら、ぜひキリスト教式を選んでください。

もし、おふたりの挙式をキリスト教式にするのであれば、ぜひ知っておいてほしいことがあります。「ヴァージン・ロードを父親と歩くのが夢」という方も多いと思いますが、実はそれを含め、式次第に厳密な決まり事は一切ありません。式の流れや演出の多くは、後の時代に形づくられたもので、イエス・キリストが「こうしなさい」と定めたわけではないのです。
だからこそ、ヴァージン・ロードは父親に限らず、あなたがいちばん納得できる人と歩いてもいいですし、あえてひとりで歩くという選択もあります。大切なのは「どうあるべきか」ではなく、「どうしたいか」です。

指輪の交換や、フェイスベールをどこで上げるかといった細かな所作も、実はそこまで重要なものではありません。結婚式で本当に大切なこと、それはただひとつ、「誓約」です。神さまの前で、永遠の愛を誓うこと。それこそがキリスト教式の核となる部分です。
本当は、ふたり自身の言葉で誓い合えたら理想的ですが、当日は緊張もあり、難しいことがほとんどでしょう。だからこそ、牧師先生の問いかけに対して、「はい、誓います」と、しっかりと答えてください。その一言に、ふたりの決意は十分に込められています。

また、キリスト教式では聖書の朗読と祈祷が行われます。聖書には結婚式にふさわしい章がいくつもあり、どの箇所を朗読するかは、司式をされる牧師先生の考えによって選ばれます。できれば、聖書の第何章第何節が読まれたのかを、心のどこかに留めておいてください。
将来、ふと聖書を開いたときに、「ここに、私たちの結婚式の日の言葉がある」と思い出せたら、その言葉は、きっとふたりの人生の糧になります。

祈祷の際には、ふたりが重ねた手の上に牧師先生がストールを置き、その上にそっと手を重ねて祈られます。そのとき、二人にだけ聴こえる小さな声で、短く語りかけてくださる先生もいらっしゃいます。それは、「これからふたりで力を合わせて歩んでいきなさい」といった、本当に親身で温かなエール。その祈りのあと、ふたりが夫婦となったことが、参列者に向けて高らかに宣言されます。

挙式のリハーサルでは、「新郎は祭壇の前に立ち、三歩ほど迎えに行きます」「お父さまはお嬢さまの手を離してください」「新郎はお父さまと握手をしてください」など、一連の流れを淡々と説明されるかもしれません。けれど、「進行どおりに、間違えないようにしなければ」と気負う必要はありません。
式次第に合わせた動きに、唯一の正解があるわけではありませんし、参列者も細かな所作まで知っているわけではありません。近くには挙式スタッフが常に付き添い、しっかりとサポートしてくれます。どうか動きに意識を向けすぎず、「ふたりが神さまの前で愛を誓う」その一点に、心を集中させてください。

イラスト tocco

\二人の想いをカタチに/

この方にお聞きしました。安部トシ子さん

安部トシ子

【プロフィール】1983年、南青山にウエディング・プロデュース会社㈱オフィース・マリアージュを設立。花嫁さんにとって結婚式が人生の宝物となるよう40年間サポートし続けているウエディング・プロデューサーの草分け的存在。各種講演やブライダル誌での監修や執筆など幅広く活躍。『25ansウエディング』では35年間花嫁の多様な質問、悩みに答えている。
《書籍紹介》
著書 「安部トシ子の結婚のバイブル」(発行 アシェット婦人画報社)、「いい結婚式ってなんだろう」(発行 エイジェイ出版)
監修「育ちが良いと思われる50の習慣」(発行 宝島社)、「大事なところをきちんと押さえる結婚の段取りとしきた(発行 マイナビ) 他

花嫁相談 編集部

花嫁相談 編集部 現役プランナーで構成する花嫁相談編集部。結婚準備を楽しく悩みの解決に役立てていただける記事を配信しています。 ここに無い質問やご相談はお気...

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