ただお洒落なだけではない!ウエディングムービーの本質とは?
ほんの15年前は「映像を残しても見返すことが無さそうだから必要ない」と言われることも多かったウエディングムービー。インスタグラムやTikTokで映像がとても身近なものになってきた現在、記録だけではなく、お洒落に編集された映像が人気を集めています。今回取材をお願いしたのは、数分のダイジェストムービーからストーリーが伝わってくる素敵な映像撮影をされる粕谷さん。実はプランナーとしてウエディング業界で活躍後、映像撮影の道へ。そして現在もプランナーとして関東だけではなくリゾートでもウエディングのプロデュースをおこなっている粕谷さんに「ウエディングの二刀流」だからこそのインタビューをしてきました!
映像クリエイターとしてのトークスタート!
寺谷プランナー 異例の経歴だと思いますが、最初にプランナーになったきっかけは何ですか?
粕谷さん ウエディングではなく別の業種で営業の仕事をしている時にときに、自分の提案でお客様が喜んでくれることの実体験をしました。そこから、やりたい事が明確になってきていたころ、ふたつの結婚式に参列するタイミングがありました。ディズニーランドの近くのホテルウエディングにはミッキーマウスがお祝いにくるし、音楽業界にいる親族の結婚式には有名人が出席したりお祝いコメントをくださったりと、いわゆる一般的ではなく「特別な」結婚式。これがどんな結婚式でも自分が提案することによって「特別な結婚式」にすることができるならと興味が湧きました。直接お客様とお話ができて、自分の提案でできあがるカタチが変わるもの。と考えたら「売り方だけではなくソフトの究極系」がウエディングだと思ったから、やってみたいと思いすぐに行動に移しました。
寺谷プランナー やりたいことからウエディング業界だと考えて、すぐに動く行動力がすごいですね。その後はプランナーとしての経験を積んだということですよね?
粕谷さん プランナー希望で採用してもらった企業では、まずは婚礼のサービス担当からスタートで料理やドリンクを出したり、結婚式の内容によってレイアウトを作ったり、結婚式のキャプテン業務と様々な経験をしました。この経験は後のプランナー業務に非常に役立ちました。その後、やっと念願のプランナーになり経験を積み、地方の会場の再生や立ち上げなども経験し、ひと息ついたところで「日本の結婚式はどこも一緒。型にはまった結婚式は地方でも都心でもやり切った!」と思ったのです。
日本の次はハワイのウエディング
そんな時偶然、目にしたのがハワイウエディング。型にはまることなく時間に自由でフラダンスしたり皆が笑顔で楽しそう!でもハワイに行ったこともなかったから、まず行ってみたら、ひとつのビーチで何組もの新郎新婦が撮影をしている現状を目の当たりにし驚きました。なのでハワイでできる理想の結婚式がしたくてフリープランナーになりました。そしてハワイウエディングのプロモーションをする為に写真や映像が必要だったので自分で撮るしかなかった。それが撮影をする始まりだったと思います。自分が担当している結婚式だから、どのシーンを撮れば良いのかがわかっていたし、高価な機材ではなかったけれど「この美しいハワイで特別なウエディング、残さなくてもったいなくない?」という気持ちから撮影を始めました。
もともと、ゲストハウスでのプランナー時代、とても仲良くなった新郎新婦との打合せ風景の写真を撮影してサプライズで映像を作って流してあげたことがありました。打合せの風景は今後一生ないから「残さないともったいなくない?」と。残してあげることが大切・普通と思っていたからずっと変わらない気持ちなんだと思います。
寺谷プランナー きっかけが「撮っておかないともったいなくない?」とは、なんてナチュラルなんでしょう。では撮影の仕方はどうやって勉強したのですか?
粕谷さん 自分自身映像を撮るのが好きだったから会場で映像担当の人がどうやって撮っているか勝手に見ていて、なんとく勉強していたと思います。正直プランナー時代、こうやって撮影すればいいのにって思っていたことも何度もありました。そんな時、心に響くエンドロールを見る機会があってその映像に釘付けに。その人の映像は毎回感動してしまうほど本当に上手だったので、たまに撮影方法を聞いたり、こっそり見たりしていました(笑)それが今の基礎になっているのかもしれません。
プランナーだからできる撮影
寺谷プランナー ズバリ!プランナーのお仕事と映像撮影とどっちが好きですか?
粕谷さん よく聞かれる質問なんだけど、楽しみが違うし好きなポイントが違います。プランナーとしてはいい結婚式をつくって当日を迎えて、とても良かったとふたりに言ってもらえることが楽しみ。映像撮影は、このシーン撮れたオレすごくない?って思うことが楽しい。これはきっと成長段階だからかも(笑) 「ココ取っておいてくれたんだ!」って言ってくれるだろうと思って撮影しているんです。
例えばスピーチした友人に「ゲストの前では言えなかったことないですか?」と聞いてみたり、新郎と一緒にサプライズで中座したお母さんに「久しぶりに手を繋いでどうでしたか?」って。きっとこれを聞いたらふたりが喜ぶだろうなと思うことを撮影しています。これはプランナーだからできることだと思う、映像撮影のクリエイターは「いい絵」を取ろうとするけど、ふたりがあとで見て喜ぶのは、サプライズで中座したお母さんのリアルな気持ちなんじゃないか?と思います。
寺谷プランナー 以前、担当している新郎から「できれば親の話している言葉を映像に残してほしい」と言われたことがありました。体調のすぐれないお父さんのことを考えての言葉だったので、人前式の中に親御様から新郎新婦の紹介をそれぞれしてもらうシーンを作りその部分をダイジェストの中に残してもらいました。写真では残せないものなのですが、どちらが良い?と聞かれることがありませんか?
粕谷プランナー 動いているものがそのまま残せるって凄いことだと思いますが、写真と映像のどちらが良い?ではなく完全に別物だと思います。最近はニューボーン撮影や七五三撮影もしています。映像で伝わる赤ちゃんのムチムチ感とか、今この瞬間しか残せないものなので。
寺谷プランナー 粕谷さんの映像を見ていると新郎新婦とすごく近い気がするのですが映像をとっているからこそ見えるものは何ですか?
粕谷さん 自分はプランナーの脳みそが70%を占めていると思います。ふたりからこんなに?って思われるほどヒアリングをすることで色んなことが見えてくるし、ふたりのストーリーがある。映像を撮り始めてから打合せで新郎新婦の自宅に行くことがあって、よりふたりの事がわかりました。以前、担当したおふたりのお子さんの七五三撮影の依頼を受けて打合せにご自宅へ行ったとき、飾られている写真は生まれたてから成長しているお子さん。その隣に必ず飼っているワンちゃんが写っていた。それを見て七五三の衣裳を着たお子さんとワンちゃんの歩く後ろ姿を映像に残した。家族が大切にしているものがわかるからその絵を残しました。
寺谷プランナー 結婚式のプランナーと一緒でヒアリングが重要ということですよね
粕谷さん 「撮影について何か希望があったらメールしてください」って言ってもそれほど言ってはもらえないもの。もっとたくさん聞き出してあげて、おふたりの背景を知って、どのシーンが大切なのかって考えたほうがいいと思います。ゲストの中でもこの人のインタビューは必須とか、逆にゲストにこれを伝えたいってことを撮影するとか。「いい映像」の定義は「おふたりにとっていい映像」で皆違う。インスタグラムにアップする映像と、表に公開しない映像は別物だと思っています。
寺谷プランナー これからの花嫁さんに向けてどんな準備をしてほしい、または何が必要だと思いますか?
粕谷さん 準備はなくて良いです! 引き出すのは撮影する側の仕事だと思います。こういうのを取って欲しいという希望があれば教えてもらいたいけど、話をすることで「だったらこういうシーン残したらいいんじゃない?」って提案できるので!
取材を終えて
1枚でその瞬間を思い出したり、想像したりできる写真と、その瞬間の声や音、動きがわかる映像。どちらも職人であるクリエイターに「おふたりにとって大切なもの」を残してもらうことが重要だとずっと思っています。粕谷さんの映像はおふたりのストーリーや、伝えたいこと、映像を見返したときに「ここ撮ってくれていたんだ!」と思える、おふたりにとっての宝物なんだと思います。結婚式はプランナーだけではなく、携わるスタッフが、チームでおふたりの背景を理解して思いを受けとめられたら、おふたりにとって「いい結婚式」になるんだと改めて実感しました。同じプランナーとして深く共感しそしてとても刺激になりました。
このかたにお話しを伺いました
フリーランスウエディングプランナー粕谷忠史さん
ハワイ&北海道~宮古島まで全国のウエディングをプランニング。そしてウエディングムービーのクリエイター
詳しくは粕谷さんのインスタグラムへ