なにが違う?予約が取れないフォトグラファーに聞いてみた

インタビュー

コロナ禍の期間が「結婚式はできないけど写真だけは残したい」というカップルに応え多くのフォトウエディング会社が誕生しています。ロケーション場所やスタジオを選んで、ふたりの思い出だけでは無く家族に同行してもらったり、友人に結婚報告を兼ねて見てもらいたい写真を撮られています。そんな中で全てのカップルが満足されているわけでは無いように思います。

ウエディングのフォト事情はインスタ映えと言われるようにSNSを通じて、大きく変化しています。
だからこそ、最近ではフォトウエディングの失敗談やフォトウエディングを成功させるにはというタイトルの記事も増えています。今回、編集部が取材したいと思ったのはそんな中でも、なかなか予約が取れない話題の撮影スポット東京国立博物館を中心にロケーション撮影で大人気のフォト会社「before the rain photography」のカメラマン依田さんを訪ねて、こだわりのフォトウエディングについてお話しいただきました。

プランナーとカメラマンのぶっちゃけトーク

寺谷プランナー:ネットで見かける【フォトウエディングで後悔している】という卒花嫁たちの記事を最近目にするのですが。例えば「当日バタバタと撮影をして結婚記念の印象があまりない」「仕上がった写真がイメージと違う」など。もちろん写真のできあがりだけではなく、ヘアスタイルやメイク、ウエディングドレスが場所と会わなかった、事前試着なしで当日選択する数が少なかった、好きなドレスが選べなかった」などが多いのですがどう思われますか?

依田カメラマン:そんなコメントを見たら正直落ち込みます(笑)お手軽に写真を残したい人と、結婚記念としてこだわりを持って撮影に臨みたい人と大きく2つに分かれている気がします。弊社を見つけてくれる花嫁さんはインスタグラムからお問い合わせをいただくことが殆どで、いろんなカップルにフォトグファーとして自分達の「世界観」を伝えられるようにしています。その世界観に共感されて申込をされるからか、ご納品したお写真でミスマッチ感がないようです。もうひとつ弊社の特徴としてセットプランでの販売形式ではないので、花嫁ご自身が拘りたい、ヘアメイクさんや衣裳を自由に選んていただけることもミスマッチが起きないポイントになっています。私達は撮影場所のご提案と撮影のスケジューリングそして当日の撮影時間の充実(撮影そのものが心に残ること)、お写真の仕上げ、ご納品の専門家として徹底的にクオリティを追求します。

ご自分で衣裳やヘアメイクを手配をすることが負担になるかと思ったらそうでもないみたいで、それよりも、インスタグラムで共感した世界観で写真を撮ってほしいという希望のほうが大きいようです。そこでもミスマッチが起きない要因は、インスタグラムでご覧になられた写真は実際にお客様に納品しているものと同じにしています。インスタグラム用に別途加工して掲載していません。だからこそ納品したときに、イメージが違うということが起きないし、ご納得いただけているのだと思います。

目からウロコの価格設定

寺谷プランナー:なるほど!!だからプランが必要ないんですね。ご本人としたら持ち込み料もかからない。依田さん側もご紹介マージンなどでお客様負担をさげて、自社では写真撮影のクオリテイと納得できる価格でお客様がご予約されているんですね。

国立博物館撮影
国立博物館にて撮影 before the rain photography

新郎新婦とカメラマンの相性ってあるの?

寺谷プランナー:たくさんある写真会社から選ぶのはとても難しいことだと思うのですが、プレ花嫁さんはインスタグラムやHPを見比べて検討をされているのだと思います。プランナーもお客様から「相性が合わないから変えて欲しい」と言われることしばしば。「カメラマンとの相性」を気にされているかたも多いような気がします。特に写真撮られるのが実は苦手だけどパートナーが撮りたいと言うから付き合うといった事もありますよね。

依田カメラマン:気の合うお客様のときだけ気持ちが通じて良い写真が撮れるのではプロフェッショナルではない。すべてのお客様と心を通じて良い写真を撮れるようになりたいと心がけています。そのために海外のカメラマンのワークショップに参加してメンタルやコミュニケーションの方法などについても勉強しました。海外ではコミュニケーションメソッドが確立していて、日本の記念撮影の決まった形ではなく、本当に良い写真とはどんなものか、良い写真を撮るためにたくさんの人がいろんな角度から考えているんです。日本ではそんなことまで真剣に考えている人は誰もいなかったので、海外の手法を学べたことは貴重な経験でした。

お客様との相性ではなくプロとしてのコミュニケーションをとって、おふたりの心を汲み取ることをしています。そして撮影をする時はいつも「おふたりと心通わせながらいい写真を撮りたい」と思っています。最初からハイテンションで明るく!というよりは少しずつ気持ちを盛り上げてリラックスしていただくようにしています。

寺谷プランナー:心を撮る努力をされているのが嬉しい!写真に撮られるのが苦手というご新婦もいて「結婚式当日にカメラの前に立つのがストレスだから撮影は無しにしたい」と相談されたこともありますが、前撮りで寄り添って撮影いただく体験をしていただくと、結婚式当日も安心してお任せできますね。私もはじめた頃とは違う、プランナーとしての経験を積むことで相性が合う合わないではなく、新郎新婦の想いを汲み取れるようになってきたと思います。かなりおせっかいなくらいですが(笑)

寺谷プランナー:依田さんにとってウエディングの写真って、どんな写真であるべきと思いますか?

依田カメラマン:お二人が「ずっと大切にしたくなるような写真」を撮りたいし、当日「ふたりから生まれる表情」「自分も知らなかった表情」を撮りたいと思っています。

寺谷プランナー:依田さんの撮影現場に立ち会わせてもらった時に感じたのが、シャッターを押す「間」であったり、ふたりにかける声のトーンやスピードなど全体的にソフトで癒やされると言ってもいいくらい独特の雰囲気だったのを覚えています。いま思うと、静かな中にお二人の空気感とシャッター音が響いてお二人がお互いだけを感じられるようになって行きました。依田さんのいう「ふたりから生まれるもの」の瞬間を待っていたんだと、今日のお話を伺って納得しました。

なぜカメラマンが3人で撮影するの?

寺谷プランナー:初めて撮影をご一緒にしたときに3名体制で撮影をされていていましたよね?アシスタントが2名も必要なんだと思ったら、撮影がはじまると皆さんが撮影をされ驚きました。3つのカメラがおふたりの表情をいろんな角度で撮影をされていて、3名のカメラマンが都度、照明位置や次のシーン準備など、自然と動いてそれぞれの役割で補っておられて何このスタイル?と二度見しました。

いままでに、結婚式当日の撮影に「2カメ」と言って2名体制でカメラマンが入られる現場は目にしていましたが、明らかにその時とは違う撮影スタイルで、段取りを組むことも適格で次に撮るシーンの準備はすでにできていて、メインで撮る人以外はベールをなびかせたり、小物の撮影をしたり、次はその人がメインで新郎新婦を撮影していたり。私達プランナーからしてみるとメインカメラマンが3人もいて、とても「贅沢」だと感じました。なぜ、この撮影スタイルにされたのですか?

依田カメラマン:お客様と共有をしている自分達の「世界観」を撮るには物理的に一人では無理だからです。限られた時間(撮影場所により限られる)の中で、バタバタとするのではなく、段取りよくスムーズに、そして何よりもおふたりが楽しかったと思える大切な記憶になるようにしたいのです。

プロのカメラマンだから良い写真を提供するのは当然です。おふたりにとっては、撮影されている時を何よりの思い出にして過ごしてもらうことも、撮影技術も大事だと。弊社は写真を撮る職人の集まりだから「幸せな時間」+「撮影技術」を提供していきたい。

プレ花嫁さんへ写真会社を選ぶポイントを教えて

寺谷プランナー:プレ花嫁さんが写真会社を選ぶポイントを一言でいうと?

依田カメラマン:うーん、難しいですね。お客様によって求めているものが違うので一概には言えないのですが、こんな写真を残したいというイメージをふたりで相談をされたほうが探しやすいと思います。価格だけではなく内容も良く検討ください。お客様の選ぶポイントではないのですが、海外ではプランナーもフォトグラファーもお客様に選んでもらう努力をしている。だからもっと努力が必要だと思っています。

寺谷プランナー:私達も同じで、式場選びの前にプランナー選びとしてお客様にご相談いただけるよう日々勉強しています。ネットで世界中の結婚式を参考にできる時代、はこれからの花嫁の選択が広がっててワクワクしますね。

寺谷プランナー:撮影をお願いをする時に新郎新婦は事前にどんな準備をすればよいですか?

依田カメラマン:弊社ではフォトウエディングのお客様とは、基本オンラインで打合せを行います。こんな写真がほしいという要望などヒヤリングさせていただきます。ただしネットで見つけたいろんな場所やカメラマンが撮影した写真をファイリングして、「ここでこんなポーズの写真がほしい」という「指示書」には疑問を感じます。

なぜなら、新郎新婦にとって撮影は「幸せな時間」であって欲しいからです。だれかの人真似ポーズを当日の現場で作る作業になり、ふたりの気持ちも撮影の流れも止めてしまうからです。リストをチェックしながら作業として撮影するのは、本当のふたりの写真にはならないからです。指示書を作って自分たちで撮れた写真をチェックしなくてはならない時間よりも、安心して任せられるカメラマン選びをして欲しいですね。私達も日本で結婚式の写真を任せるならbefore the rainに頼めば間違いないでしょ、ってくらいになりたいです(笑)

寺谷プランナー:リストをチェックしながら撮影同行したことがあるのですが、私も良かれと思ってお客様に希望を伺ったのですが、チェックリストの撮影をするだけで終わってしまって、おふたりにもカメラマンにも申し訳なかったと反省をしました。プランナーとしてアドバイスする時に「どうしても撮ってほしいポーズがあったら、ひとつだけ教えてください。」あとは当日を楽しみましょうとお伝えしています。

WPPI silver award 2022 受賞

寺谷プランナー:御社の写真はドレスの質感も伝わるお写真だなといつも思うのですが、その秘訣は?。

依田カメラマン:人生で一番大切な日に着るウエディングドレス選びは、花嫁にとって一番想い入れがあり多くの時間やお金をかけています。だからこそ、ライティングや構図にこだわって準備し最高の一枚を残せるようにしています。

寺谷プランナー:ライティングや構図ですね。そういえば「WPPI silver award 2022」受賞おめでとうございます!選ばれた14枚の写真の中の1枚は私が担当した新郎新婦の写真なんですが、いつもの前撮り撮影の中の1枚だったので、驚きと感動でした。

依田カメラマン:ありがとうございます。3人とも賞とかにこだわるタイプではないのですが、日本の写真のクオリティがより高くなるようにという気持ちから最近は出品するようにしています。WPPI は、自分自身写真がもっとうまくなりたいので、学びの機会だと思っています。審査も公開され、エキスポもあり、意識の高いカメラマンが集まる場所です。最近は日本のカメラマンも出品されるかたが増えています。カメラマン選びの基準にもしてもらいたいですね。

wppi受賞写真 ロングベール花嫁
2022年WPPI Silver Award受賞写真 14枚のうちの1枚 

寺谷プランナー:今後、どんな場所で撮りたいですか?

依田カメラマン:自然の中で撮りたいとか、撮ったことのない場所で撮りたいとか思いますが「場所」が重要なのではなく「新郎新婦ふたりから生まれるもの」が重要と思います。

この写真も、写真スポットでではなく、結婚式の会場にあった場所で普通に行くとなんでもない場所だと思いますが、新郎新婦の立つ位置にとてもこだわり出来上がった1枚で、WPPIで世界1位の評価をいただきました。

WPPI受賞写真 世界1位
WPPI 世界1位の評価をされた1枚

寺谷プランナー:素敵な写真ばかりでずっと見ていられます。もし自分が花嫁だったら自分の家のリビングに飾りたいって思いました! 

「フォトウエディング」と「ウエディングフォト」

寺谷プランナー:最後に「フォトウエディング」と「ウエディングフォト」の違いって何だと思われますか?

依田カメラマン:フォトウェディングは挙式をせずにウェディング衣装を着て撮影をして二人の記念にするという認識です。ウェディングフォトは前撮りも当日の撮影も含めた婚礼写真の総称だという認識でいます。個人的な捉え方ですが。

寺谷プランナー:私たちも同じ認識です。以前、撮影スタジオでのフォトウエディングでご一緒した時に、急遽おふたりだけの「ふたりしき」という挙式を入れたことがありましたよね。その時の花嫁さんがとっても感動されて泣いてしまった時も静かにシャッターを押して、誓いの言葉を話せるタイミングまで待ってくださっていたことがありました。その時の写真もどれも素敵だったのですが、ポーズをとっている写真ではなく挙式でしかでない表情などの写真が多かったですよね?

依田カメラマン:撮影の中にお二人の記念になるセレモニー的な瞬間があるのは良いと思います。普段の撮影でももちろん写真は素敵なものを提供したいと思ってますが、同時に撮影の時間そのものが素敵な思い出になったらいいなと思ってるので。

寺谷プランナー:記念撮影だけではなく挙式があるからこそできる、心に寄り添った写真をこれからも一緒に創っていきたいですね。

スタジオ撮影ふたりの挙式
スタジオ撮影で「ふたりしき」をおこなう直前の新郎新婦

取材を終えて

Befortherainの皆さんの真摯な想いが伝わってきました。自分達が作る世界観を希望して来られる新郎新婦にその期待を裏切らないための努力を惜しまない。新郎新婦にとって「とても大切な時間を写真に残す」という思い。何年経っても写真を見るたびに、その時の記憶が楽しく大切な記憶として蘇みがえる写真を撮りたい。まさにプロフェッショナル・職人だと感じました。

「一生に一度の結婚式という大切な瞬間に関わるという想いをもっていなくてはウエディングの撮影をしてはいけないと思う」依田さんのおっしゃられた言葉で印象的な一言。

そういう思いを大切にして努力をされているかた達だから、世界的な評価を得られる写真を撮ることができるのだと思いました。

たくさんいるカメラマンの中にはウエディングの撮影に対して、依田さん達と同じ想いを持っている人、また残念ながらそうではない人もいます。インスタグラムの写真をみて、このカメラマンさんに写真を撮ってもらいたいと思って依頼する場合はご自身で選ぶことができます。しかし結婚式会場提携のカメラマンの場合は指名しないかぎり当日はじめましての場合が多いと思います。

おふたりの大切な時間を素敵な写真に残してもらうために、出来る限り事前に打合せ、またはオンラインでご挨拶だけでもしてもらうことをおススメします。

この方にお聞きしました before the rain photography 依田 龍廣さん

カメラマンbefortherain

before the rain photographyの皆さん
(右から2番目が依田さん)

何年経っても色褪せない写真のスタイル。インスタフィルターのような流行りにとらわれない、本来の美しさを追求しています。感情や空気、目に見えないものを写真にしたいと思っています。あなたの大切な一日に一番の親友として寄り添うようなそんな距離で。

詳しくは公式サイトをご覧ください
before the rain photography

寺谷 晶子

ウエディングプランナー 出身地 東京都 「ふたりに寄り添い、大切な結婚準備〜結婚式をお手伝いします」 ゲストハウスの立ち上げ〜レストランウエディングなどプラ...

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