運命の一着、どうやって探す?ウエディングドレスを探す前に知っておきたいこと

オーダードレス
インタビュー

「こんなウエディングドレスが着たい!」ってワクワクしながらドレス画像をネットで探すのって楽しいですよね。運命の一着に出会えるように、知っておいたほうが良いと思う事をお届けいたします。まず、ウエディングドレスを選ぶには3つの方法があります。

・ドレスショップでレンタル

・購入(新品販売・中古販売など)

・オーダーメイドドレス

今回お話を伺ったのはオーダーメイドドレスサロンCroque en Bouche(クロカンブッシュ)オーナー・荒井悦子さん。クロカンブッシュは、素材やシルエットにこだわり、花嫁さんの魅力を引き立てるウェディングドレスを提供されていて、オードリー・ヘップバーンやグレース・ケリーのような、品格ある雰囲気が好きな花嫁さんの憧れるクラシカルなドレスが人気のサロン。

ここからトークスタート!

寺谷プランナー:ウエディングドレスはレンタル中心のドレスショップが大半ですが、オーダードレスのお店を作ったきっかけは何ですか?

荒井さん:以前はアパレルメーカーでデザイナーをしていたのですが、自分の結婚式の時に着たいドレスが見つからなかったのです。今思えばウェディングドレスの選択肢が限られていたのだと思います。自分の着たいドレスを考えたことがひとつのタイミングでした。

その時は仕事関係の友人の力を借りて、ウェディングドレスを制作してもらいました。私の中では50年代60年代の映画に出てくるオードリーヘップバーンやグレイスケリーが着ていた様なシンプルで上品なドレスが夢でした。日本でも有名なデザイナーの先輩方がいて作ることはできましたが、まだ和装と洋装とお色直しを2回する事が一般的な時代で、ドレスだけに100万近い金額を掛けることは一般的ではありませんでした。

そして結婚後、仕事をしていく中で少しずつ抱いた疑問が膨らんでいきました。それは相手の見えない一方的な製品作りと量産によってあふれる物への不安でした。そんな時訪れたのがフランスのパリです。短期でしたが友人とシェアーして借りたアパートメントで生活する中で見つけたのが、小さな“Robe de marieé”のお店でした。店頭にドレスが1点飾ってある小さなオーダードレスのお店で、店内をのぞくとメジャーを首から下げたマダムがお客様と話をしながら寸法を測っていました。今でも忘れられません!

それから自分が思い描いていた 「上品でシンプルでオシャレ」をテーマに、お客様お一人お一人の顔を見ながら寄り添った物つくりをしたいとウェディングのオーダーサロン「クロカンブッシュ」を立ち上げました。最初は認知してもらうことに苦労しましたが、雑誌への掲載を機にゆっくりですが、お客様が増えていきました。

作らせて頂ける喜びとお客様から頂く「ありがとう」の言葉は何にも代えがたく最高の幸せを感じています。そしてクロカンブッシュを選んでくれた多くの花嫁様と私を支えてくれているすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

寺谷プランナー:自分が作ったものを着ている人の顔が見えることや感想を直接聞けることがアパレルと大きな違いなんですね。初めてドレスを作ったお客様のことは覚えていますか?

荒井さん:しっかりと覚えています。最初は心配で会場まで見に行きました(笑) もちろん最初は不安材料もたくさんありました。花嫁様に直接お目に掛れるはずもないのですが、ただただ心配でじっとして居られなかった事を今でも覚えています。

花嫁の魅力を出せるウエディングドレス

寺谷プランナー:オーダーのウエディングドレスを作り始めて30年以上になられると思いますが今と昔で変わったことはありますか?

荒井さん:ウエディングドレスを着る花嫁さんの7~8割はレンタルドレスで満足されているけれど弊社にお越しになるのはそれ以外の方。どちらかというとこだわりのある方や個性的な方が多いのですが、それは今も昔も変わらないと思います。

クロカンブッシュを初めて何年か経ったころ、レストランウェディングの流行り初めだったと思います。大手編集者の方のウェディングドレスを作らせて頂いたのですが、渋谷の閑静な住宅街にあるレストランでオードリー風くるぶし丈のドレスと共布でキャノチェ帽(ベニスのゴンドラをこぐ人が被る帽子)をお作りしました。忘れられない思い出です。

また私がまだ子供の頃、芸能人の井上順さんとモデルの青木エミさんの結婚式はとても印象に残っています。1970年頃ハワイのマウイ島での結婚式でした。その時のドレスが衝撃的で、白のジャケット&パンツのスーツにメンズライクの帽子をかぶっていました。私はかっこいいなーと思いましたし、子供心にウェディングドレスの定義が大きく変わった写真でした。

「お姫様になりたい!」と憧れる花嫁さんも沢山いらっしゃいますが、雑誌で見るような海外セレブは多種多様、大きなプリンセスドレスからスレンダードレスなどのよくあるウェディングドレスからミニドレスやパンツスーツまでさまざまです。それぞれのこだわりで選ぶドレスはまさしく自分自身を最大限に表現しています。そんな選択肢の一つになれたらいいなーと思って始めました。

昔と比べて変わったと思う事は、女性の結婚年齢です。女性は特に体力・見た目全てに実年齢よりは10歳位若くなっていると感じます。それゆえに花嫁年齢の幅も広がり、ウェディングのスタイルも様々です。単にドレスを選び作るのではなくその内面のこだわりも理解してドレスを提案し、制作しなければならないと昔以上に感じています。

アンクル

レンタルドレスではなくオーダードレスだからできること

寺谷プランナー:荒井さんのドレスで私が今でも忘れられないのは、15年前に見たパイピングのショートベールの美しさでした。それまではロングベールが主流でインパクトも大きかったのですが、花嫁さんの雰囲気に合った、アンクル丈のドレスとショートベールのバランスがとても綺麗で印象的でした。ドレスには黄金比があるのでしょうか?

荒井さん:そうなんです!全体のバランスだと思います。皆さん普通はウェディング・ドレスのデザインとサイズで選び、小物は二の次三の次になりがちですが、ドレスを選ぶときに少しだけ小物のイメージをもって全体のコーディネートをすることが大切です。

ドレスのコーディネートはファッションから繋がるもので、流動して変わっていきます。常に新しいファッションの流れを感じて、自分の感性を研ぎ澄ましていくかが私の役目だと思っています!ですので“これらがすべての黄金比”の存在はなく、バランス感覚を養い“お客様一人一人に合ったコーディネート”と“それぞれの黄金比を見つけてあげる事”に努めています。

又、ドレスを制作するとき、大切にしていることはそれぞれの「どう見せたいか?」という思いです。体型も顔も全く同じ条件だとしても「どう見せたいか?」が違えばデザインは同じだとしても大きくバランスが変わってきます。ましてデザインが変わればもっと効果的に表現することが出来ます。その為に内面を引き出してあげる事がオーダードレス制作の最大魅力です。そしてそれこそが“唯一無二のドレス”を作ることになります

小物でトータルコーディネイト

寺谷プランナー:ますます、オーダードレスに惹かれるのですが、結婚式準備を会場選びからスタートし、選んだ会場が決まったドレスショップと提携をしている場合、まずはそのドレスショップの案内をされると思います。そうすると出会えるドレスショップが限られることが多くなります。荒井さんにお願いしたい場合はどうしたら良いのでしょうか。

荒井さん: 8割以上の方はクロカンブッシュと出会いたいと思ってご来店頂いています。以前はご来店のきっかけがウェディング雑誌中心でしたが、今はインスタグラムやSNSを見て、ホームページなど事前リサーチをしてからご来店されます。多くの方は「レンタルで見つけられる!」と疑わず、実際その時期になってからレンタルショップに行って、「着たいドレスがない無い!」と慌てて動き出すパターンです。そうなってからでは遅いのです。「持ち込みはできません!」と突っぱねられ泣く泣くあきらめるとよく聞きます。できれば会場を決める際の条件に持ち込みできるアイテムや持ち込み料の確認をされておくことが重要です。

やっぱり気になる「持ち込み料」

寺谷プランナー:御社と提携をしていない会場の場合、持ち込み料が発生していることが多いと思いますがどうですか?

荒井さん:そうですね。30年前になりますが私自身持ち込み料 3万円かかりました。それは保管料という名目でした。現在はドレス5~10万円・タキシード2~5万円という金額が相場で高額だなと感じています。『会場が決まっている方には、「持ち込みできるか?」を、会場が決まっていない方には、契約をする前に「持ち込みをしたい!」という意志を先に伝え下さい。』と言っています。ウェディングドレスは「持ち込みドレス」から「提携ドレスショップ」への移行は問題ないと思いますが「提携ドレスショップ」から「持ち込みドレス」への変更は認められないケースが多いです。

新郎新婦にとって結婚準備は初めての事、いろんな事を教えてくれる場所があったら良いな~と思います。こだわりをちゃんと大事に扱ってほしいし「結婚式をやらなきゃよかった」と思われないようにしたいと強く思います。

寺谷プランナー:そうですよね、結婚式はどんな仕組みになっているのか、大きな決断をする前にこれを知っておけば良かった、など弊社の「花嫁相談」にご相談くださる花嫁さんから言われる事がよくあります。ドレスはどこのドレスでも良い自由な結婚式のプロデュースをしておりますので荒井さんのドレスを着たい花嫁さんの結婚式を、これからも一緒にサポートさせていただけますね!

オーダードレス制作
ドレス制作風景

イメージ通りに着付けをしてもらうには

寺谷プランナー:こだわりのドレスを持ち込まれた時にイメージ通りに着付けをしてもらえているのかと心配になられることはないですか?

荒井さん:着付けをされる会場のヘアメイクさんがわかりやすいように、特に難しいドレスなどは「着付け方の説明書」と明記したものをドレスと一緒に入れてお渡しするようにしています。以前、説明書を納品書と同封していたのですが、見てもらえず着付けで失敗してしまったことがありました。花嫁さんの気持ちを考えると本当に辛いです。それからは花嫁さんにも伝え、着付けの方が直ぐ分かる様にドレスの前にぶら下げるように致しました。当日は慌しくて余裕がないことも分かります。自分の姿も確認せずにお客様の前にでてしまうこともある様なので、必ず花嫁様にも「出来上がった姿を360度鏡に映して確認して下さね!」とお願いしています。

寺谷プランナー:確かに、360度お姿を見せることなく移動してしまうというのは、支度時間の取り方で解消できる問題ですね。それと結婚式当日、よくあることなのですが、ビスチェが下がって下着が見えてしまうことがあります。これは防げないものなのでしょうか。

荒井さん:人間の身体は柔らかいし動けば、着ているうちにどうしても動いてしまいます。今は下着に差し込むものなどの小物もでてきて一般的に落ちない工夫もかなりされているので昔よりは進化していると思います。その他に私達が制作時に気を付けているのは、あまり締め付け過ぎない事です。他の部分に身体のお肉がはみ出てしまうので、「そこそこのゆとりをもって仕上げること」これも大切なことです。

寺谷プランナー:花嫁さんの身体に合わせてできる、オーダーメイドだからこそですね。最終フィッティングはいつ頃したほうが良いですか?

荒井さん:オーダーでも最終フィッティングは結婚式の1~2週間前が多いです。身体をしぼりたい人やマタニティはなるべく仮縫いもぎりぎり、最終フィッティングもぎりぎりに設定しています。

オーダードレス

寺谷プランナー:海外ドレスで人気のブランドがいくつもありますが日本のものと違いはありますか?

荒井さん:海外ブランドは世界観を持ってモノづくりをしているので本当に素敵なものも多いと思います。憧れる花嫁さんが多いのも納得です。もし着られるのであれば、サイズ感など、ちゃんと合わせてもらえるのかが重要、憧れのドレスのモデル写真と、ご自身が同じように着用できるのかドレスショップの方によく相談してください。気になるところは忌憚なく尋ねることでどこまでの対応をしてくれるかも分かり安心できます。 丈さえも直してもらえない事もあり、その場合は全体のバランス(ウエスト位置、バスト位置など)もずれていることが多いので要注意です。ブランドによっては日本人体型に合わせてつくっているところもあるようですので、着てみて判断することが大切です。

大人花嫁(40歳以上)のドレス選び

寺谷プランナー:最近は結婚相談所で出会って結婚されるかたも多く、中には40歳以上の「大人婚」の花嫁さんも多いと思うのですが、ドレス選びのコツはありますか?

荒井さん:クロカンブッシュに来られる花嫁さんは50代の方もいらっしゃいます。話をしていて思いますが、若い花嫁さんと勝負をしたいなんて思っていないです。なぜなら大人花嫁にしか似合わない素敵なドレスがあるからです!

若い頃ってみんな個性が似ている気がします。大人花嫁は生きてきた年数分個性にも磨きがかかり違いや、その個性を活かして差し上げたいです。個人差はありますが年を重ねると体型は多少崩れていきます。しかしそれを綺麗に見せるための技を持っていますし常に工夫をします。

安っぽい素材ではなく質感の良い素材を選びます。生地の織り方や重みとそれを生かすシルエットと卓越した縫製技術でさらに質の良い高級感が伝わるからです。例えば、レースは太さや質で繊細さが変わり、より細く長い糸でこそ緻密な柄を作ることができ、上品で希少価値の高いものになります。お二人が満足するだけでなく、目の肥えた方々にも「素敵なドレスね!」と言ってもらえるように今まで培ってきた力を発揮して、「最高のドレス」をお届けしたいと思っています。

寺谷プランナー:プロの目利きですね。プロからのアドバイスはとても安心できます!最近インスタグラムでご自身のドレスをリメイクされたかたを見ました。自分だけのオーダードレス、結婚式のあとはどうされるかたが多いですか?

荒井さん:ご覧いただいたかたのようにお友達の結婚式に着ていくパーティドレスや自身の演奏会用ドレスにリメイクされる方が多くなっています。結婚式が終わった後もお会いできるのでその後のご様子も伺え楽しいです。

寺谷プランナー:一度きりではなく、違う装いとしても着てもらえること、そして結婚式後も続く「ご縁」は素敵ですね。オーダードレスの興味深いお話、たくさんありがとうございました。最後に、時代と共に変わらないもの、そして新しく取り入れているものを聞かせてください

荒井さん:変わらないものは、ドレスへの想いと本質。オードリーヘップバーンやグレースケリーが来ていたウエディングドレスはいつの時代の花嫁さんも可愛いと感じられています。でも時代ごとにトレンドは変わりますので、時代の流れにあうように、バランスを少しずつ変えています。いかにお一人お一人のドレスをオードリーやグレイスのように不変の美しさに浄化できるか?それが私の目標でありいつまでもたどり着けないテーマです。

寺谷プランナー:なるほど、だからクロカンブッシュのドレスはクラシカルでありながら古さを感じさせないのですね。永遠の可愛さ・美しさ、それこそ本当に永遠のテーマですね。いつも花嫁さんの試着に同行させてもらうと私自身も楽しくてテンションがあがります。結婚準備をされている、すべての花嫁さんにドレス選びの楽しさを体験していただきたいです。

取材を終えて

花嫁・花婿の衣裳は一般的にレンタルをされる方が全体の86.6%(XYトレンド調査2021より)です。人真似ではなく、花嫁さん自身を表現できるオーダードレス。自分を知ってくれて魅力を引き出してくれた特別感のあるドレス。海外の花嫁さんと同じようにドレスをつくることから結婚準備を始めるのもお洒落です!荒井先生の経験豊富な匠の技と、花嫁さんに対する想いの温かさに安心してご相談をいただけると思います。自分だけのウエディングドレス、想像するだけでワクワクしますね!

このかたにお話しを伺いました。株式会社クロカンブッシュ オーナーデザイナー荒井 悦子さん

東京生まれ。女子美術短期大学造形科卒業。P&B社(プレイボーイ)にてメンズを中心としたKNIT衣料の企画に携わる。その後レディースアパレルメーカーにてデザイナーとして勤務する。 1984年ワールドでKIKUCHI TAKEOブランドを立ち上げる際の企画スタッフを経て、フリーランスのデザイナーとしてアパレルメーカーに所属。いくつかのブランドを手掛ける。 準備期間を経て1990年ウェディングドレスブランド『クロカンブッシュ』を立ち上げ、今に至る。

クロカンブッシュ公式サイトはこちら croque.en.bouche

寺谷 晶子

ウエディングプランナー 出身地 東京都 「ふたりに寄り添い、大切な結婚準備〜結婚式をお手伝いします」 ゲストハウスの立ち上げ〜レストランウエディングなどプラ...

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