言葉にならない言葉
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
今回のお話は、ご新婦とそのお母様との特別な絆にまつわるものです。ご新婦は、女手一つで育ててくれたお母様に対して、深い感謝と尊敬の念を抱いていました。幼少期からお母様がどれほど大変な思いをしながら、育ててくれたかを知っているからこそ、結婚式は特別な意味を持つものでした。結婚式をするにあたり、ご新婦の心の中には、お母様への想いが溢れていました。日々の生活の中で自分を支えてくれた母親の存在、そしてその愛情を感じながら成長した自分がいることに気づきます。
お母様もまた、娘であるご新婦への想いを抱いていました。「一人前になった娘が、これから新たな人生を歩むことを喜びながらも、少しの寂しさを感じている」といった気持ちがあったのでしょう。
結婚式当日、緊張の中、式は滞りなく進んでいきました。友人たちや親族に囲まれ、温かい雰囲気の中、愛に満ちた誓いの言葉が交わされました。しかし、特に感動的だったのは新郎新婦退場のシーンです。
ここで新郎新婦は、親御様へお気持ちを伝えるほんの少しの時間が設けられていました。ご新婦は、お母様を前にした瞬間、涙をこらえるのに必死でした。心の中では感謝の言葉が溢れているのに、それを言葉にするのはとても難しいことです。やっとの思いで絞り出された言葉は、
「ムリ・・・」という一言でした。
その言葉の裏には、お母様への感謝や愛情が混ざり合っていたことでしょう。その様子をご覧になられたお母様は、何度もうなずきながら「大丈夫、わかってるよ」とでも言うように、優しい眼差しで娘を見つめていました。
お母様のその瞬間の表情には、娘の成長を誇りに思う気持ちや、これからの人生を共に見守るという深い愛情が込められていました。そのままバージンロードを歩き出すご新婦を見守るお母様も、目頭を押さえながら涙を流していました。
母と娘の結婚式。言葉では表せない絆を感じる大切なひとときでした。この瞬間は、ただのセレモニーではなく、長い年月を経て築かれた信頼と愛情が込められた、かけがえのない時間でした。親から子への愛情、そして子から親への感謝。それらが交錯する中で、家族の絆はより一層深まっていきます。結婚式は新たな人生のスタートを祝う場であり、同時に親子の絆を再確認する大切な瞬間でもありました。
チャペルディレクター 末木より