お母様のエスコート
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
ご新婦のお父様は数年前に他界されており、その代わりにご新婦のエスコート役を務めるのはお母様でした。式の準備中、何度もお母様の緊張した面持ちが印象的でしたが、同時にその中に感じられる温かな愛情がありました。
挙式本番、ベールダウンの瞬間が訪れました。お母様は一歩前に進み、娘である花嫁にそっと近づきました。ベールに手をかけた瞬間、涙がこぼれ始めました。お母様は涙を拭おうとしましたが、どうしてもこらえることができませんでした。そして、ベールを丁寧に下ろしながら、花嫁の顔を見つめて優しく声をかけました。
「ここまで本当に頑張ったね…」
その言葉には、これまでのお母様とご新婦の歩んできた道が詰まっているかのようでした。お父様が他界されてからの生活、一緒に支え合いながら困難を乗り越えてきた日々、そして今日この日を迎えるまでの努力と感謝の思い。お母様の言葉に、花嫁の目にも自然と涙があふれ出しました。
「お母さん…ありがとう… 本当に…ありがとう…」
花嫁も涙を浮かべながら、精一杯の感謝を伝えました。そして、お母様と花嫁はそっと抱き合いました。その抱擁の中には、言葉では表せないたくさんの思いが込められていたことでしょう。
お母様の背中をさすりながら、花嫁は「ここまでこれたのは、お母さんがいてくれたから」と、さらに感謝の気持ちを伝えました。
お母様は少し微笑みながら、「これからは○○さんと一緒に、もっと幸せになりなさいね」と囁きました。その言葉に、花嫁はしっかりとうなずきました。
周りにいたゲストたちも、この二人のやり取りに胸を打たれました。静かなチャペルの中に響くのは、お母様と花嫁の優しい声と、その愛に感動したゲストのすすり泣きでした。二人が抱き合うその姿を見て、会場全体が涙であふれた瞬間でした。
お母様は優しく包み込むようにご新婦の右手を取りました。そして、そのままゆっくりと歩き始めました。歩くその姿は、まさに家族の愛と絆を感じさせるものでした。バージンロードを歩きながらも、お母様は何度も娘を見つめ、優しい目でその姿を目に焼き付けているようでした。そして、ご新婦はそのたびに微笑み返しながら、お母様への感謝と愛情を全身で伝え続けていました。
お母様は「お願いね、娘を幸せにしてあげて」と新郎に声をかけると、新郎は深くうなずき、「はい、幸せにします」と力強く応えました。その瞬間、お母様は安心したように微笑み、花嫁から手を離しました。
新しい一歩を踏み出す花嫁を見守るお母様の姿がそこにありました。その背中からは、これまでの愛情とこれからの祝福の思いが溢れているように見えました。
チャペルディレクター 水谷より