花嫁の父の席

式場選び

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

ご新婦は、幼少期にお父様を亡くされました。その後、お母様が再婚され、新しいお義父様と家族になりました。結婚式では、そのお義父様がご新婦をバージンロードでエスコートすることになりました。お義父様との入場は、もちろんご新婦にとってもお母様にとっても感慨深い瞬間となるはずです。

結婚式のリハーサルでは、入場の説明が行われました。お義父様は、緊張されるご様子もなく、ご新婦と仲睦まじく話しながら歩く練習をされました。リハーサル中も、笑顔が絶えず、親子の絆がしっかりと築かれていることが、見る者すべてに伝わってきました。お二人の間には、言葉では言い表せない温かさがあり、お義父様がご新婦を大切に思っている気持ちがあふれていました。

とはいえ、お義父様にエスコートをお願いすることに決めるまでには、少し時間がかかったと伺っていました。ご新婦は最初、お母様か兄弟にエスコートをお願いしようと考えていました。実のお父様との思い出を大切にしているからこそ、お義父様に対してどのように気持ちを伝えれば良いのか迷われたのでしょう。しかし、お義父様はそれを理解し、穏やかな態度で見守ってくださいました。最終的にご新婦はお義父様にエスコートをお願いすることを決断され、そのことに対して心から感謝されていました。

そして迎えた挙式当日。チャペルの扉が開かれると、お義父様に腕を取られたご新婦が、ゆっくりとバージンロードを歩き始めました。お義父様は、ご新婦をしっかりと支え、誇らしげに一歩一歩を踏みしめていました。前方で待つ、ご新郎にご新婦を託しエスコートを終えたお義父様は、花嫁の父としての役目を果たし、席に戻られました。

本来座る場所はバージンロードに最も近い列の、花嫁の父としての席。けれど、その席を一つ分空け、ゆっくりと座られたのです。その空席は、まるで天国にいるお父様のために用意された席のように感じられました。あたかもそこに実のお父様が座っているかのように、席を一つ空けたその光景は、誰もが胸を打たれる瞬間でした。

お義父様が座られた隣にお母様もそっと座られました。その姿は、まるで天国のお父様も一緒に見守っているかのような、暖かい家族の絆が感じられる瞬間でした。実のお父様がいなくても、家族の愛は形を変えず、ずっと続いていることが、この光景から自然に伝わってきました。

ご新婦のお母様もまた、感慨深い表情でご新婦を見つめられていました。天国のお父様の存在を胸に刻みながら、お義父様と共に、今ここにいる家族としての時間を大切にしている様子が伝わります。

式が進む中で、誰もがその空席の存在に気づきました。それはただの空席ではなく、ご新婦の実のお父様が今もなおご新婦を見守っていることを象徴する、特別な席でした。その場にいた全ての人々の心に、その空席の意味が深く刻まれ、2人のお父様の想いが今も変わらず家族の中に息づいていることを感じさせました。

チャペルディレクター 末木より

花嫁相談 編集部

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