赤いスイートピーの約束
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
私が担当させていただいたお二人の結婚式で、忘れられない感動的な瞬間がありました。
お二人は、人前式での挙式を希望されており、挙式の打ち合わせの際にご新郎から一つの特別なリクエストがありました。それは、挙式中に「赤いスイートピー」という曲を流したいというリクエストでした。シンプルに思えるリクエストには、実は深い意味が込められていたのです。
ご新郎がまだお腹の中にいたころ、お母様がよく歌っていたのが、この「赤いスイートピー」でした。お母様は、妊娠中にいつもこの曲を優しく口ずさみ、新郎に聴かせていたそうです。お母様にとっても、お腹の中の息子にとっても、この曲は特別な絆の象徴であり、成長した息子の結婚式で再びこの曲を聴けることは、まるで昔の思い出が甦るかのような特別な瞬間でした。
挙式当日、チャペル内は温かな光に包まれ、誓いの言葉が交わされる厳かな場面が進む中、「赤いスイートピー」の美しいメロディーが静かに流れ始めました。その瞬間、ご新郎のお母様の目に涙が浮かび、次第に頬を伝うほどの大粒の涙が流れていました。息子が成人し、立派に育ち、そしていま目の前で結婚を誓う姿。それに加えて、自分が愛を込めて歌っていた「赤いスイートピー」が流れるその瞬間は、言葉にできないほどの感動をお母様にもたらしたのです。
会場全体がその感動に包まれる中、司式者がこのエピソードを参列者に紹介しました。お母様がご新郎に歌っていたこの曲が、いま、結婚式の誓いの瞬間に流れているということ。そしてその意味を知った瞬間、チャペル全体が感動に包まれました。ご新郎が選んだ曲には、母親への深い愛と感謝の気持ちが込められており、その想いは式に参加された全員の心に深く響いたのです。
音楽が進む中、お母様は静かに息子の姿を見つめ、涙をぬぐいながらも誇らしそうに微笑んでいました。成長した息子が、まさにその場で新たな人生を歩む決意を誓っている姿。ご新郎も、その温かな音楽に包まれながら、誓いの言葉を真摯に、そして心からの感謝を込めて述べていました。
結婚式という特別な場で一つの曲がもたらす感動の力を、私は改めて感じました。音楽が持つ力、そしてそれが繋ぐ家族の絆。ご新郎が選んだ「赤いスイートピー」は、お母様との深い愛情の絆を象徴するものであり、その絆が式場にいる全ての人々に伝わった瞬間でした。
結婚式はそれぞれの家族の物語や歴史が詰まっている特別な時間です。この感動的な瞬間に立ち会えたことは、私にとっても大変貴重な経験であり、お二人とご家族にとって一生の思い出となることを心から願っています。
チャペルディレクター 熊木より