20年ぶりの抱擁
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
結婚式当日、チャペルの入場扉の前で、緊張した面持ちのご新婦が、お父様と二人で立っていました。長いバージンロードを前にして、心の中で色々な感情が交錯していたのかもしれません。そんなご新婦に、お父様は優しく声をかけました。
「ゆっくり行こうな」
その瞬間、二人の間に温かな空気が流れ、長い年月を共に過ごしてきた家族の絆が感じられました。入場を控えたこの特別な瞬間、何気ないお父様の言葉は、ご新婦にとって安心感を与えるものでした。
「いってらっしゃいませ」とスタッフが送り出し、お父様とご新婦はバージンロードの手前で足を止めました。参列者たちは二人が歩き出す瞬間を静かに待っていましたが、ここで思いがけないサプライズが待っていたのです。
突然、お父様は会場全体に向けて大きな声で語り始めました。
「皆さん、聞いてください。」
会場内のすべての視線が、お父様に集中します。お父様は、少し緊張した様子ながらも笑顔を浮かべ、ご新婦に向けて続けました。
「昔、私はよく娘を抱っこしていました。こんなに大きく成長した娘を、今ここで20年ぶりに抱っこしたいと思います。」
その瞬間、会場は一瞬静まり返り、次に何が起こるのかという期待感が高まりました。ご新婦も突然の言葉に驚き、目を大きく見開きましたが、お父様が笑顔でご新婦を見つめるその表情には、深い愛情が感じられました。
お父様は一歩前に出ると、少しよろめきながらも必死に娘を抱き上げました。ご新婦は驚きながらも、涙を浮かべてお父様の肩に頭を預けます。お父様の強い腕に支えられたその瞬間、20年の時を超えた「抱っこ」が実現されたのです。
会場内は、瞬く間に感動に包まれ、大きな拍手と歓声が湧き上がりました。ご新婦のお母様や兄弟姉妹たちも驚きの表情を見せながら、笑顔の中に涙がこぼれています。参列者たちも、目の前で繰り広げられるこの心温まるシーンに、目頭を押さえました。
ご新婦自身も、驚きと感動で涙が止まりませんでした。父親の無償の愛が、会場にいる全ての人々に伝わり、チャペル全体が温かな感情で満たされていきます。
お父様が娘を抱き上げてから、再び優しく降ろし、二人は目を合わせて微笑みました。その瞬間、言葉にならない感謝と愛情が交差し、周りの人々もまた胸が熱くなるのを感じました。父親としての深い愛が詰まったサプライズに、会場全体が一つになり、感動に包まれたのです。
この20年ぶりの抱擁は、娘にとっても一生忘れられない瞬間となりました。お父様のサプライズは誰もが予想しなかったものでしたが、参列者の心にも、そして何よりも新婦自身の心に深く刻まれるものとなりました。式が終わった後も、父娘の特別な時間はゲストの間で語り継がれ、結婚式をより一層特別なものにしました。
チャペルディレクター 解良より