亡きお父様からの祝福

亡きお父様からの祝福
感動ストーリー100

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

春の穏やかな日差しに包まれた晴れの日、結婚式を迎えたご新郎とご新婦がいらっしゃいました。ふたりは緊張した面持ちでありながらも、これから始まる新たな人生に向けて一歩を踏み出す喜びに満ちていました。

この日の挙式は、形式にとらわれることなく、自分たちらしさを大切にしたいという強い想いから、見守ってくださる家族やゲストに向けて感謝と愛を誓う「人前式」を選びました。ふたりは、自分たちの言葉でしっかりと気持ちを伝えたいと願っていたのです。

そしてこの日、花嫁の父が座る最前列にお父様の姿はありません。

ご新婦にとって、お父様はいつもそばにいて、どんなときも温かく支えてくれる大切な存在でした。本当は誰よりもこの結婚式を心待ちにしていて、バージンロードを一緒に歩くことを夢見ていたのです。しかし、その夢は叶えることができなくなってしまったのです。

ご新婦にとって、お父様とバージンロードを歩くことは、これまでの人生の集大成でもありました。父と娘の時間を最後に共有する大切な瞬間だったのです。それが叶わない現実に、ご新婦の心には深い悲しみがありました。それでも、この日を迎えたご新婦は、天国にいるお父様に想いを届けるため、精一杯の笑顔で前を向いていました。

挙式が始まり、ご新婦はご新郎の隣に立ち、見守るゲストに向かって感謝の言葉を述べました。「今日ここに立てているのは、これまで支えてくださった皆さまのおかげです。特に、お父さん、お母さん、本当にありがとう。お父さん、お父さんがそばにいてくれたら、どんなに心強かったでしょう。でも、私はお父さんの教えてくれたことを胸に、この日を迎えました。どうか天国から見守っていてください」と、涙をこらえながら話すご新婦の姿には、会場全体が胸を熱くし、静かな感動に包まれました。

そして、ご新婦の言葉を受けて、ご新郎が続けて誓いの言葉を述べました。ご新郎は、ご新婦の想いを受け止めるように、一瞬ご新婦に微笑みかけ、それからゆっくりと天国のお父様に向かって語りかけました。

「お父さん、お母さん、おふたりの大切な◯◯さんを、僕に託してくださってありがとうございます。これからの人生、どんな困難が訪れたとしても、僕は◯◯さんを守り抜きます。そして、彼女を幸せにし、共に笑顔で溢れる家庭を築くことを誓います。お父さん、どうか安心してください。」と、ご新郎は心からの言葉を丁寧に伝えました。

その瞬間、春の穏やかな風がそっと二人の頬を優しく撫で、まるで祝福のささやきを届けるかのようでした。

会場にいるゲストも、その誠実で真っ直ぐな誓いに心を打たれ、涙を拭う姿が多く見られました。二人の新しい人生が始まる瞬間に立ち会った私たちスタッフも、心が温かくなるのを感じました。

ご新婦にとって、お父様と一緒に歩くバージンロードは夢叶わなかったものの、その想いはご新郎の誓いの中でしっかりと受け継がれました。ご新郎が発した言葉には、ご新婦のこれまでの歩み、そしてお父様の愛情が込められており、まるでご新郎がご新婦のお父様の代わりに、彼女を守る誓いを引き継いだかのようでした。

チャペルディレクター 末木より

花嫁相談 編集部

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