二人のお兄様への感謝の気持ち
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
ご新婦のお父様は10年前に他界されました。とても厳しい方だったそうですが、それ以上に家族想いのお父様で、小さい頃は家族5人でよくキャンプや登山に出かけたそうです。ご新婦には二人のお兄様がいらっしゃり、家族はとても仲が良かったと言います。お父様が亡くなった後は、二人のお兄様がご新婦のお父様代わりとなり、「父の厳しさも引き継いでくれていて」と、ご新婦は笑いながら話していました。
そんなふたりのお兄様は、ご新婦にとっていつも頼りにできる存在であり、特にお父様を失ってからは、その存在がより大きく感じられるようになったそうです。お兄様たちが、ご新婦のことをいつも大切に見守り、支えてくれたことで、ご新婦は一度も弱音を吐くことなく生きてこられたのだと、打合せの時に教えてくれました。そして「お兄ちゃんたちには尊敬しかありません」と語られたその言葉から、ふたりのお兄様に対する深い感謝の気持ちがひしひしと伝わってきました。
ご新婦はこれまで、感謝の言葉を直接伝える機会がなかったそうです。そして結婚式で、その感謝をどうしても伝えたいとおっしゃり、新婦はお兄様にエスコートしてもらうことにしました。お母様によるベールダウンの後、5つ上のお兄様と最初にバージンロードを歩き、途中で2つ上のお兄様にバトンタッチをするという計画でした。
結婚式当日、リハーサルで初めてこのことを知ったお兄様たちは少し驚いた様子でしたが、同時にどこか照れくさそうに笑っていました。そして、ご新婦からの「ありがとう」の言葉に対しても、照れた笑みを浮かべながら静かに受け止めていました。
そして迎えた本番。ご新婦はお母様によるベールダウンを終えた後、5つ上のお兄様と一緒に歩き出しました。その手はしっかりと握られ、まるで幼い頃にお父様と手をつないで歩いた思い出がよみがえるかのようでした。途中で2つ上のお兄様にバトンタッチをする予定でしたが、ふたりのお兄様は揃ってご新婦の手を取り、ご新郎の元までエスコートしました。
チャペルの中で、新郎へのエスコートチェンジが行われた瞬間、そこには新郎とお兄様たちの間に強い感動のハグが交わされました。新郎は深く頭を下げ、その後、お兄様たちと抱き合いながら、「大切にします」と静かに誓いました。
その場には笑顔と涙があふれていました。ふたりのお兄様に守られ、愛する人の元へと歩みを進めたご新婦。その姿は、家族の絆と、そしてお兄様たちへの深い感謝の気持ちが感じられるものでした。
チャペルディレクター 田中より