幸せになってほしい

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

結婚式で感動するのは、ご新郎ご新婦やご家族、そしてゲストの皆様だけではありません。実は、私たちスタッフも数々の場面で心を揺さぶられることが多々あります。その中で、挙式を司る牧師先生と、結婚式を迎える新郎新婦とご家族のお話があります。

挙式が始まる前の静かなひととき、ご新婦とお父様は控室で準備を整えていました。控室は、これまで共に過ごしてきた親子の時間を思い返す場所でもあります。その大切なひとときを見守るのが、私たちスタッフや牧師先生です。

この日も、控室でご新婦とお父様が最後の時間を過ごしていると、牧師先生が優しい声で問いかけました。「お父様からご新婦に、何かお伝えしたいことはありますか？」と。その問いに促され、お父様はしばしの間沈黙したあと、ゆっくりと語り始められました。

「○○、これまで本当にありがとう。お前が生まれてから今日まで、どんなときもお前の笑顔に支えられてきたよ。たくさんの思い出が詰まったこの時間を、こうして迎えることができて、お父さんはとても幸せだ。これからは○○さん（ご新郎）と共に、新しい家庭を築いていくんだな。どうか幸せになってほしい。そして、困ったことがあったら、いつでも帰っておいで。」

お父様の声は少し震えていましたが、その言葉一つ一つに込められた深い愛情と感謝の気持ちが伝わってきて、ご新婦も目に涙を浮かべながら静かにうなずいていました。その光景はとても感動的で、そこに立ち会っていた私たちスタッフ全員が、胸が熱くなるのを感じました。

まだ幼いお嬢様がいらっしゃる牧師先生も、その瞬間には特別な想いを抱いていたのでしょう。ご自身と重ね合わせたのか、お父様の言葉に目を潤ませ、涙をこらえるのに必死なご様子でした。その姿から、父親としての愛情がどれほど深いものか、私たちも改めて感じ取ることができました。

控室から出てこられた牧師先生は、目を真っ赤にしており、まだ少し涙をこらえているようでした。その表情には、親が子を送り出すことの意味、その覚悟と愛情の深さが映し出されていて、私たちも自然と胸にこみあげるものを感じました。

その後、結婚式は厳かにはじまりました。チャペルの扉が開き、お父様にエスコートされたご新婦がゆっくりとバージンロードを歩き始めます。その姿はまるで、これまでの親子の絆を象徴するかのようで、お父様の手からご新婦の手がご新郎へと渡される瞬間には、会場全体が感動に包まれました。

牧師先生が式を進行する中、その目には先ほどの感動がまだ残っているかのようで、一つ一つの言葉に先程のご新婦のお父様からの深い思いも込められているように感じられました。そして、ご新郎ご新婦が誓いの言葉を交わし、指輪を交換する姿を見守る中で、牧師先生の優しい微笑みが会場をさらに温かい空気で包んでいました。

この挙式を通して、親子の愛情がどれほど深いものかを改めて感じさせられました。ご新婦を送り出すお父様の姿には、誇りと寂しさ、そして新しい家庭を築く娘への期待が入り混じっていました。その想いを受け取ったご新婦もまた、新しい生活への決意を胸に、しっかりと前を向いて歩み出しました。

結婚式は、新しい人生の門出を祝う場所であると同時に、それまで育んできた家族の絆を感じる大切な瞬間でもあります。ご新婦とお父様の最後のひととき、牧師先生の温かい言葉のやり取り、そのすべてが重なり合い、挙式を特別なものにしていました。

私たちスタッフもこのような感動的な瞬間に立ち会うたびに、結婚式の素晴らしさを改めて感じます。親から子へと受け継がれる愛情、新たに築かれる家庭への希望、そのすべてが詰まった結婚式という特別な日。この日が、ご新郎ご新婦、そしてご家族の皆様にとって永遠に忘れられない素晴らしい一日となるよう、私たちも心を込めてお手伝いをしています。

チャペルディレクター 末木より