嗚咽

嗚咽
感動ストーリー100

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

退場のワンシーンでのこと。挙式が終わり、チャペルの扉が開かれたその瞬間、新郎新婦は新たな人生の一歩を踏み出すために外へと進んでいきました。ゲストからの温かい拍手と笑顔に包まれ、おふたりは晴れやかな表情でチャペルの外まで歩みを進めていました。

しかし、その先で一つの小さな出来事が起こりました。ご新婦のトレーンはとても長く、チャペルの扉に絡まるように広がっていたのです。扉を閉めるためには、あともう少しだけ前に進んでいただきたいのですが、ご新郎は何かに気を取られたかのように、その場で立ち止まってしまっていました。

私は、少し焦る気持ちで「もう少し前へ進んでいただけますか?」と何度か声をかけました。

その度に、ご新郎は一瞬反応するものの、なかなか前へ進むことができない様子で、まるでその場に根を下ろしてしまったかのように立ち止まっていました。少し不思議に思いながらも、ようやくご新郎が一歩を踏み出し、無事に扉を閉めることができました。そして、おふたりの背後で扉がゆっくりと閉まったその瞬間、私はご新郎に近寄り、その理由に気がついたのです。

扉を閉めた後、ご新郎の姿を見ると、がっしりとした体型で広い肩を小さく丸め、うなだれているように見えました。まさかと思い、そっと声をかけると、そこにいたのは、グローブを鼻に押し当てて嗚咽をこらえるように泣いているご新郎の姿でした。その涙は、今までの緊張がほぐれた安堵感、そして大切な人と一緒にこれからの人生を歩む喜びが、すべて一度に押し寄せたものだったのでしょう。

結婚式の最中、ご新郎は常にご新婦を気遣い、堂々とした振る舞いでゲストや家族に頼れる姿を見せていました。しかし、その強さの裏側には、今日という特別な日を迎えられたことへの感動が隠されていたのです。誰よりも冷静で、頼もしい存在でありたいと願う気持ちの中で、感情が溢れ出す瞬間を迎えたご新郎の姿に、私も胸を打たれました。

泣きながらも、ご新郎は何度もグローブで目元を拭い、涙を見せまいとする姿勢を崩しませんでした。その様子をそっと見守るご新婦も、涙を浮かべながら微笑んでいました。「大丈夫だよ」と、ご新婦がご新郎の手に軽く触れた瞬間、二人の間に静かな絆が感じられました。その触れ合いに、言葉を交わさずとも互いに通じ合う深い愛があることが伝わってきました。

この退場のシーンは、ご新郎にとって、そしてご新婦にとっても忘れられない特別な瞬間となったことと思います。感情が抑えきれなくなり、思わず涙を流すご新郎の姿に、多くの人が心を動かされたはずです。

おふたりが新たな人生を共に歩み始めたこの日、その一歩一歩は決して一人で踏み出すものではなく、互いに支え合い、共に進んでいくものであることを強く感じました。そして、これからの長い道のりの中でも、きっとおふたりは今日のこの涙と微笑みを思い出しながら、手を取り合って進んでいくのだろうと感じました。

チャペルディレクター 末木より

花嫁相談 編集部

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