ありがとうの一歩

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

私が担当させていただいたお客様の結婚式で、特に心に残った温かいエピソードをご紹介させていただきます。

事前のお打ち合わせの際、ご新婦は入場時のエスコートをお母様にお願いしたいとお話しされました。お父様はご健在でいらっしゃいましたが、なぜお母様を選ばれたのか、その理由については特に詳しく伺いませんでした。ご新婦にとって何か深い意味があるのだろうと感じながらも、まずはそのご希望に沿って準備を進めることにしました。

そして、挙式当日のリハーサルが始まりました。ご新婦とお母様が入場口に立たれ、私はそのお手伝いをしていたところ、ふとお母様が「本当に私でいいの？」とお父様に向かって優しく問いかけられたのです。その声はとても穏やかで、しかしどこか深い思いが込められているようでした。

その言葉を聞いたお父様は、一瞬静かに考え込まれました。式場全体が少しの間、静けさに包まれました。しばらくして、お父様はゆっくりと顔を上げ、ご新婦の横に立つお母様に向かって温かな笑みを浮かべました。彼は何も言わずにお母様の手を取り、優しく握りしめました。その微笑みは、お母様に何かを語っているかのようでした。

その瞬間、お母様もまた優しく微笑み返しました。すると、お父様はゆっくりと立ち上がり、ご新婦の方に歩み寄りました。ご新婦は最初、驚いたようにお父様を見つめていましたが、その目にはすぐに涙が浮かびました。そして、小さな声で「お父さん、ありがとう」と、感謝の言葉を静かに紡ぎました。

お父様は言葉なくうなずき、やさしくご新婦の腕を取りました。二人はゆっくりと腕を組み、ご新婦の顔には安堵と感謝の気持ちが溢れていました。そのままご新郎のもとへと歩み出す姿は、まさに感動的な光景でした。ご新婦の歩みは、一歩一歩、まるでその瞬間にすべてを受け入れるかのように、穏やかで力強かったです。

その姿に参列者たちも胸を打たれたことでしょう。式場全体が温かな感動に包まれ、まさに家族の愛が形となった瞬間でした。

この時間は、ご新婦とお父様にとっていつまでも心に残る貴重な瞬間だったに違いありません。そして、この場に立ち会わせていただいた私たちスタッフにとっても、心から感動した瞬間でした。家族の愛と絆が織りなすこの美しい瞬間に立ち会えたことに、深く感謝しています。

チャペルディレクター 水谷より