娘へ、愛情込めた手作りの贈り物
挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。
ご新婦のお母様は、娘が生まれる前から裁縫が得意で、手先が器用な方でした。ご新婦が幼い頃から、お母様は手作りの洋服や小物をたくさん作ってあげていたそうです。ご新婦にとって、お母様が作ってくれるものはどれも特別で、世界に一つだけの愛情が込められた贈り物でした。
例えば、小学校の入学式に着ていった洋服や、遠足に持っていった可愛らしいお弁当袋、部活動で使うためのユニフォーム袋など、お母様の手作りの品はご新婦の毎日にいつも寄り添っていたのです。
そして時は流れ、彼女は大人になり、ついに結婚式を迎える日がやってきました。
人生の新たな門出に立つ大切な日、ご新婦は控室でメイクやヘアセットを終え、ウェディングドレスを纏い、いよいよ式の準備が整いました。そんな中、お母様が突然控室に現れたのです。お母様は手に美しいリングピローを抱えていました。
そのリングピローは、優雅で繊細な刺繍が施され、上品なレースで縁取られており、一目で特別なものだと分かるものでした。驚いたご新婦は「どうしたの?」と尋ねました。
するとお母様は、静かに微笑みながらこう話したのです。「このリングピロー、実はあなたが小さかった頃から少しずつ作り上げていたものなの。いつかあなたが結婚するとき、このピローを贈りたかったのよ。」
ご新婦は驚きと感動に包まれ、そのリングピローをまじまじと見つめました。それはただのリングピローではなく、お母様が娘のために長い時間をかけて、心を込めて作り上げた特別なものでした。
ピローには、ご新婦が生まれて間もない頃に使ったベビードレスの生地の一部が使われており、刺繍のデザインはご新婦が幼い頃に好きだった花の模様でした。お母様は、娘が生まれた瞬間から、この日のために少しずつ準備を進めていたのです。
お母様は涙を浮かべながら、リングピローにまつわる想いを静かに語り始めました。
「このリングピローは、あなたがお腹の中にいたときから、いつか結婚する日のために作ろうと決めていたものなの。あなたが生まれてきてくれたとき、どれほど幸せだったか、そして今日こうして結婚式の日を迎えられて、どれほど誇りに思うか、言葉では言い表せないの。おめでとう、本当におめでとう。」
その言葉を聞いた瞬間、ご新婦は感極まり、涙が止まらなくなりました。お母様が自分のためにこんなにも長い間想いを込めて準備をしてくれていたことを知り、胸がいっぱいになったのです。
ご新婦はお母様に駆け寄り、二人はしっかりと抱きしめ合いました。その後、この特別なリングピローは指輪の交換の場で大切に使われました。
ご新郎とご新婦が指輪を交換するその瞬間、リングピローに込められたお母様の愛情が、さらに二人の未来を温かく照らすかのようでした。
チャペルディレクター 髙橋より