流さない涙

流さない涙
感動ストーリー100

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

長い長いバージンロード。その道の先には、これから共に歩む人生のパートナーであるご新郎が待っていました。バージンロード沿いには白い花が飾られ、あたたかな雰囲気に包まれていました。その中で私が目を引いたのは、ご新婦のお父様が見せた「流さない涙」でした。

花嫁のエスコート役を務める父親の姿は、なんとも言えない威厳と愛情に満ちていました。背筋をまっすぐに伸ばし、娘と一歩ずつ進んでいく姿には、これまでの娘との思い出が全て詰まっているかのようでした。ご新婦の父の顔は、まさに感情の波が押し寄せる中で、それを全力でこらえようとしているかのようでした。

「お父さん、大丈夫?」とご新婦が小声で問いかけると、父は一瞬だけ顔を下げ、娘を見つめました。そして、震える声で「大丈夫」と答えました。その言葉に、いろんな想いが込められているのが感じられました。

バージンロードを歩く途中、お父様は何度も目元をこすりながら、必死に涙をこらえようとしていました。その姿に、娘への深い愛情やこれまでの日々の記憶が一瞬一瞬、胸にこみ上げてきているのだと感じました。

娘が初めて立った時、初めて自転車に乗れた時、そして進学や就職など人生の節目。その全ての思い出が、この瞬間に凝縮されているようでした。

お父様は娘に向ける言葉を飲み込みながらも、その手に込めた力で娘への思いを伝えていました。長いバージンロードを一歩ずつ進むたびに、ゲストたちもその親子の深い絆に心を打たれ、会場内は静寂に包まれました。そんな中、前で待つ新郎の姿が次第に近づいてきました。

ご新郎の前までたどり着き、ご新婦を託すその瞬間、お父様は目を真っ赤にして、涙をぐっとこらえました。お父様は静かに深呼吸し、一歩前に進んで娘の手をご新郎に差し出しました。

「頼むな、娘幸せにしてやってくれ」と、声を振り絞るようにしてご新郎に言葉をかけました。ご新郎はその言葉を受け、真剣な眼差しで「はい、お父さん。必ず〇〇さんを大切にします」と答え、深々と頭を下げました。その瞬間、父親の目にはもう一度涙が浮かびましたが、決して流れることはありませんでした。

お父様がゆっくりと娘の手を離すと、会場に静かな拍手が響きました。その拍手には、父親の愛情と娘の新しい旅立ちを祝う気持ちが込められていました。娘は涙を浮かべながらも微笑み、ご新郎と手を取り合い、新たな一歩を踏み出しました。

流さなかった涙に込められた想いは、会場にいたすべての人々に深い感動を与え、そしてこれから始まる新しい家族の幸せを願う気持ちを強く感じさせる瞬間となりました。

チャペルディレクター  末木より

花嫁相談 編集部

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