車椅子の父と共に

車椅子の父と共に
感動ストーリー100

挙式に携わる私達が目にした、感動レポートをご紹介します。全て実話です。

私が担当した結婚式で、ご新婦がどうしても叶えたい夢がありました。それは、車椅子生活をしているお父様と一緒にバージンロードを歩くことでした。お父様は病気の影響で歩行が難しく、日常生活のほとんどを車椅子で過ごされています。しかしお父様とバージンロードを歩くことは、ご新婦にとって最も大切な願いでした。

私たちチャペルスタッフは、まずお父様の体力や歩行能力を慎重に確認しました。杖を使えば数歩歩くことが可能だとわかり、それを活かしてどうすれば安全に、かつ感動的な演出ができるかを考えました。そこで、ご新婦のお兄様にも協力していただき、入場からバージンロードの途中まではお兄様にエスコートをお願いし、その後でお父様が立ち上がり、ご新婦と一緒に残りの距離を歩くというプランを練り上げました。

結婚式当日、扉の向こうで車椅子に座るお父様の表情は、何とも言えない喜びと感動に満ちていました。ご新婦のドレス姿を見た瞬間、目に涙を浮かべながら微笑んでいた姿がとても印象的でした。

扉が開き、新婦とお兄様がゆっくりとバージンロードを歩いてくると、会場全体に温かい空気が広がりました。お父様はその様子をじっと見守りながら、いよいよ自分の出番が近づいてくるのを感じていました。バージンロードの3/4の地点に到達すると、お兄様がそっとお父様にバトンタッチ。お父様は一度深呼吸をし、全身の力を振り絞ってゆっくりと立ち上がりました。杖を握り、少しよろけながらも、背筋をピンと伸ばして一歩を踏み出すその姿に、会場中の誰もが目頭を押さえることができませんでした。参列者たちは固唾を飲んで見守りながら、その瞬間を心に焼き付けました。

お父様と手を繋ぎながらゆっくりと歩くご新婦の表情は、感謝と愛情に満ち溢れていました。父と娘の絆が一歩一歩、バージンロードを進むたびに深まっていくように感じられました。そして、ついに祭壇の前にたどり着いた二人。ご新婦は涙を流しながらお父様に「ありがとう」と伝え、お父様も静かに頷いていました。

この瞬間、チャペルは家族愛に包まれ、感動の波が広がっていきました。この特別なバージンロードは、参列者にとっても、私たちスタッフにとっても忘れられない瞬間となりました。お父様の力強い愛と、それを支える家族の絆が詰まった結婚式でした。

チャペルディレクター 田中より

花嫁相談 編集部

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